01 | 語学留学プログラム | |
01 | 語学留学プログラム | |
在 籍:関西の私立高校の高校1年生(男子)Fくん
不 登 校:中学2年生の夏ころから
ご相談時の状況:起立性調節障害、中2の夏ころから朝起きられなくなる
初回 の 面談:8月、大阪・梅田での合同相談会にて、お母さまとご面談
留 学 国:ニュージーランド
留 学 期 間:1週間
学びリンク株式会社さん(以後、学びリンク)主催の「通信制高校が集まる合同相談会」という進学・進路に向けたイベントが全国30カ所で開催されています。その全ての会場で、私たちターニングポイントは、「不登校生のための海外留学」という講演会と、「留学相談コーナー」を担当させて頂いております。 そのうちの一つであります、大阪・梅田で開催されました合同相談会の会場で講演を聞いて下さり、その後留学相談コーナーにお立寄り頂きましたお母さまからのご相談をお受けしたのがきっかけとなりました。
講演を聞き、「起立性調整障害でも一人で行けるなら海外留学のチャンスを与えたい」という想いが湧いてきたとおっしゃっていました。起立性調節障害のお子さまでも、留学する地域をしっかりと選び、サポートがしっかりしていれば十分に実りある留学が出来ると私たちは信じ、多くの起立性調節障害で悩んでいる子どもたちに留学を紹介してきています。
お母さまとしては、この留学をきっかけに2学期から復学ができたらとの想いもあり、準備期間が短かったものの、Fくんの意欲もあったことで、8月末の出発に向けて準備を行いました。関西から東京に施設のあります「国内ホームステイ体験」にも来てもらい、一緒に食事を作りそして食べてたくさんのお話をし、不安を少しづつ取り除きました。翌朝は、しっかりと目覚まし時計を掛けて自分で起床し、朝食の準備を行うことができました。私たちターニングポイントは、Fくんのその頑張りを褒めました。そして「F君ならできる!大丈夫だよ!何か困ったことがあったらいつでも連絡してくればいいんだから!」と応援している存在がいることを理解して、ご自宅へ戻っていきました。
出発の3日前。お母さまから突然のメールが入りました。「本人はなんだか自信を持っているようですが、私の方が心配でしょうがありません。」と。私たちは「お母さま、Fくんは定期カウンセリングから国内ホームステイ体験、そして毎朝の生活報告まで、短時間ではありましたがしっかりとやり遂げています。私たちは信じています。できると信じています。お母さまも一緒に温かい気持ちで応援していきましょう。」と言いました。出発2日前。「やっぱり、ホームステイ先で朝起きられないかも知れません。ずっと学校に行っていなかったので。学校も2日間だけ通うだけでもいいので、その他は休んでもいいのでしょうか?」という連絡が入りました。 お母さまはあの当時を振り返り、普段身近なところでお子さまの生活を見ていると、到底留学など出来るなんて思えなかったと言います。急なお話ではありましたが、お母さまに「同行サポート」のご提案をいたしました。
お母さまは、このサポート内容を理解しお申込みになることを決めました。私たちは急きょ同行するスタッフの確保、飛行機の手配、空港からの移動の手配、滞在先の手配を行い、翌々日にはF君を追いかけるように飛び立ちました。現地では、毎朝学校でF君を待ち、もしも登校してこなかったらホームステイ先に向かい様子を確認し必要に応じた対応を行うつもりでいましたが、1週間の滞在期間中、毎朝定刻に登校ししっかりとレッスンを受けていました。その様子を、毎日お母さまに状況の報告メールを送りました。お母さまは大変喜んでおりました。私たちは、国内サポートの中で「留学に立ち向かう」準備が整うことを確認し、最後は空港でお見送りをいたします。ときに、「留学に立ち向かう」準備が整っていないと判断した場合には、出発の延期も提案することもあります。
Fくんには、留学に立ち向かう準備が整っていると判断し送り出す準備をしておりましたが、お母さまの判断に差が生じたことに一抹の不安を感じましたが、見事にF君は1週間の留学をやり切りました。帰国の日、オークランド空港でF君に聞きました。「1週間の留学はどうだった?楽しかったかな?」「久しぶりに学校に通ったけど、楽しかったです。1週間じゃ短いっすね!(^^)」Fくんは、2学期から復学することになりました。
02 | 語学留学プログラム | |
02 | 語学留学プログラム | |
「前にニュージーランドに家族で旅行に行ったときとても過ごしやすかった。今までと違う環境で過ごしたら開放的になれて自分の居場所は日本だけではないと感じた」初めて会った時、Kくんは海外に興味を持った理由を、このように話してくれました。
Kくんは、夜になれば眠りたいと思う一方でなかなか寝付けなかったり、人との交流をさほど好まないなどマイペースな日々を送っていたようでしたが、海外留学については、「なんとかなる」と前向きの様子でした。
ご家族様は「正直心配もあります」と話されていましたが、留学に対するKくんのポジティヴな姿勢は変わらず、留学カウンセラーとも、カウンセリングを重ねるうちにいろいろ話してくれるようになりました。「留学で何をしてみたい?」という問いにも「外国人の友達を1人作る」「ホームステイで現地の人たちと生活を共にしながら自分が過ごしやすい環境を見つけたい」と、徐々にはっきりと語ってくれるようになっていきました。
ご両親様も、その変化を喜ばれ「新たな環境に自分からチャレンジしようとしている姿を見ることが出来て、それだけでも嬉しい」と話されていました。また、あまりに「大丈夫」一点張りのKくんを心配して、一人で生活する大変さや、困ったとき、分からないことがあった時にはきちんと周りに相談することを何度も伝えたそうです。この留学をきっかけに家族内のやり取りや話し合う機会が増えたそうで、ご家族様からは「準備期間も含めて、本当に貴重な経験をさせていただいた」という声を頂いています。
出発の約1か月前に1泊2日の国内ホームステイを実施いたしました。Kくんとご両親様にお越し頂き、留学前のオリエンテーションを行いました。万が一、留学中に問題が起きた場合の解決方法や、生活における注意点などじっくり1時間半かけて行いました。その後、ご両親様を駅までお送りしている間に、国内サポートスタッフと一緒に夕食作りを行いました。「じゃK君、人参の皮むきをお願い」「それが終わったら人参を切って。食べたい形で切っていいよ。正解はないから!」慣れない手つきではありましたが、Kくんなりの切り方で調理をしてくれました。
これは、他の人の家で宿泊するときには「その家庭でのルール」があることや、「日本と海外の生活習慣の違い」を知るためでもありましたが、ターニングポイントスタッフとの距離を縮めることも重要な目的のひとつでした。一緒にカレーライスを食べ、留学カウンセラーの留学時代の写真を見ながら成功談や失敗談を聞き「留学ってこんな感じかぁ」と感じられる時間となったと思います。またKくんが持ってきたボードゲームを一緒にして楽しく過ごしました。
翌朝も7時に自分で起床し、一緒に朝ご飯の準備をしました。「海外でのホームステイではだいたい朝食はシリアル(コーンフレーク)だよ。自分で好きなだけお皿に盛り牛乳をかけて食べるんだよ。ここでも全く同じだから好きな味、好きなだけお皿に盛って食べてね」と。「牛乳はあまり好きではないので牛乳無しでもいいですか?」と自らの気持ちをしっかり伝えてくれました。そうなんです。海外では自分の思いをしっかり相手に伝えなければならないのです。「もちろん!OK」。朝食を済ませ、食器は自分でシンクまで運び家を出る準備を終えました。駅まで迎えに来て下さっていたお母様に、朝は自ら起床したことを伝えると驚きながらも嬉しそうでした。
このホームステイ体験の次に会うのは成田空港です。「それまでしっかり生活リズムを整えていこうね」とKくんに告げて別れました。
出発時刻の3時間前に集合しました。K君とご両親様は揃ってお越しになられました。K君はなんの心配もなさそうに終始笑顔。意外にも、一番心配そうなのはお父様でした。手荷物で機内に持ち込むもの、持ち込めないものを確認し、K君と留学カウンセラーはご両親様に挨拶して飛び立ちました。
現地到着後、現地日本人ドライバーが出迎えてくれ、ホームステイ先へ向かいました。車中、バンクーバー市内を通り、ドライバーからカナダ、バンクーバーのことなどガイドしてくれ、Kくんはカメラでたくさん写真を撮っていました。
ホームステイ先に到着すると、優しそうなホストマザーが出迎えてくれ、握手を求めてきました。Kくんも恥ずかしながらも笑顔で握手を交わしました。ちょうどクリスマスシーズンでしたので、家中クリスマス色にデコレーションされ、温かくKくんを迎えてくれました。
現地サポートスタッフ(日本人)と留学カウンセラーがホームステイ先までお迎えに。そして一緒に学校まで向かいます。明日から一人で通うために街並みも覚えつつ散策し、電車の乗り方、切符の買い方を教えてもらいながら学校に到着しました。 英語のレベル分けテストを受け、上から4番目!学校の先生にもたくさんほめてもらったそうです。日本で海外の人とオンラインゲームでやり取りしている中で、英語でコミュニケーションを取ることに抵抗がないと言っていましたが、ここまで上位のクラスに入れるとは正直思いませんでした。
授業終了後には、現地サポートスタッフと留学カウンセラーが待っていてくれて、現地サポートオフィスへ向かいました。途中、バンクーバーの観光名所である「ガスタウン」などに立ち寄りながら街を散策もできました。オフィスでは、学校のルールや生活上のルールなどを教えてもらい、「困ったことがあったらこのオフィスに来ていいんだよ」と言ってもらい安心した様子でホームステイ先に帰宅しました。
翌朝からは一人で学校に通うことになっているわけですが、こちらの心配はよそに毎日学校に通い授業を受ました。ただ、1回遅刻したそうですが(笑)。それでも学校に遅れることを学校側にメールで知らせたことで、学校側も留学カウンセラーも混乱はせずに済みました。こんなことが起きた時の対処法として学校スタッフが伝えたことをしっかり守ってくれたことは、出発前にシュミレーションを行った成果だったと思います。
日本では味わえない人と人との距離感であったり、風の吹き方、空気の匂い、街に飛び交う多様な言語・・・どれもこれも正解でも不正解でもなく、ただそこにはその地の現実があるということ、そしてここまで留学に挑戦しようと決意し、準備を進め、少しずつでも変わろうとしたK君がいます。それを支えて下さっているご家族のみなさま、現地サポートスタッフ、学校関係者、ホームステイファミリー・・・がみんなでKくんの留学を応援し続けました。
毎日通学し9時から14時10分まで英語のレッスンを受けました。 クラスメイトはKくんより年上ばかりでしたが、一生懸命ついていこうと努力していました。「机に向かって長時間勉強するのは久しぶりでしたが、英語を学ぶのは楽しい」とKくんは話してくれました。毎日宿題も出ましたが、苦労しながらも何とかこなしていました。 授業が終わると自由時間です。図書室やコンピュータールームで勉強したり、カフェテリアで友達と雑談したり、街に出て映画を観たり買い物したり自由に過ごします。
また、学校ではいろんなアクティビティ(イベント)を用意していて、興味があるものがあれば自由に参加ができます。Kくんの滞在中に「ディズニーアイスショー」を観に行くアクティビティがあり、Kくんは「これ観てみたい」と興味を示しました。Kくんは自ら予約カウンターに出向きチケットを購入しようとしたところ「このアイスショーはすごく人気で1週間前には売り切れてしまったよ」と告げられ、苦笑い。チケットを購入できなかったのは残念でしたが、落ち込むことなく前向きです。自分から興味を持ちチケットを購入しようとした行動は立派でした。
Kくんはポケモンが大好き。出発前からバンクーバーで特別なキャラクターをゲットしたいと意欲的でした。雨が降ろうと見知らぬ海外の地でグーグルマップを駆使しながらポケモン探しに夢中になりました。このことにより度胸がついたのではないでしょうか。帰宅の際降りるバス停を通り過ぎてしまい、次のバス停で降りて自力で家まで帰ってきたそうです。
ある日の放課後、留学カウンセラーがKくんをカナダで大人気のドーナッツ屋に連れて行きました。育ち盛りの高校生、ランチの後もお腹がすきます。甘いドーナッツとこれまた甘いコーヒーフロートを平らげ笑顔が絶えません。翌日、Kくんは1人でそのドーナッツ屋に行き、自分でクリスマス限定ドーナッツを注文したそうです。またある日のランチでは、学校にピザが売られに来ました。そこでもK君はピザの購入にチャレンジしました。毎日の1つ1つの出来事が、Kくんに自信を持たせたのだと思います。
学校終了日の放課後は、一緒にお父さん、お母さんへのお土産を買いに行きました。その頃にはもう留学カウンセラーのサポートは一切不要で、店員さんに挨拶して軽い世間話をして、サイズを聞くこともお金を払いお釣りをもらうのも全て自分でできるのです。
その後は、2010年冬季オリンピックの聖火台を見に行きました。観光にはあまり興味がなかったKくんですが、これには興味津々で何枚も写真を撮っていました。 1つ残念だったのは、他国からの留学生と交流を持とうと試みたのですが、話すチャンスがなかったことでした。ですがうまくいかないことも人生にはあることが学べたのではないでしょうか。これもいい経験です。
出発前にはあまり想像できなかったこの行動力と頑張りをいち早くお母様に伝えたく、留学カウンセラーは毎日お母様とLINEのやり取りをしていました。共に驚き、共に嬉しさを分かち合いました。
海外に行く、留学をするということは誰でも不安です。私たちターニングポイントはお子さまやそのご家族様に寄り添いながら不安を一つひとつ取り除き、現地の学校や滞在先とのサポートを充実させ万全な体制で臨んでいます。Kくんの留学も、その姿勢で備えて参りました。
出発が近づいてきた頃、一番近くでKくんに接していたお母様は、現実的な心配が生じてきたようでした。その時は、Kくん抜きで作戦会議を行い、とにかく、頑張っているKくんの気持ちを尊重すること、Kくんの未来につながる留学にするという共通の目的を再確認しました。その上で、現地で休むことになった場合には、現地サポートオフィスや学校のスタッフと相談して対応することをお知らせしました。
そういった不安を事前に打ち明けて下さることがとても重要で、本人もご家族様もより安心して滞在できるサポート体制を作ってゆけるのです。お母様の心配を全て把握できなかったかもしれませんが、出来るだけ歩み寄り、まずはKくんがどうしたいのかをそれを最大限実現できるようにサポートすることに徹しました。また、Kくんも出発が近づくにつれ、英語が通じなかったらどうしようという不安をちらっとお母様に話していたそうです。ですが、やはり彼の中の行きたい気持ちは揺るがず、笑顔で空港に現れました。その後は既に書いた通り、Kくんは現地で充実した時間を過ごしていました。
今回はなによりKくんの熱い想い、そしてそれを見守りながらご家族のみなさまのご協力もあってスムーズに進みました。 この1週間というあっという間の時間は、ご家族様にとってはひやひやした長い1週間だったことでしょう。けれども、お母様の表現をお借りすると「水を得た魚のよう」だったそうで、自由に泳いだ1週間だったかも知れません。
Kくんはこれから長い人生を歩んでいくわけです。時に苦難に当たり八方ふさがりの状況に陥ることもあるかも知れません。でもそんなとき「あの時頑張れた自分」がいることで「なんとか乗り切る!」勇気が湧いてくることをこの1週間は教えてくれたと思っています。
『留学カウンセラーさんとの対話の時に、食事や言葉など不安はないかじっくり聞いてくださったことがありました。息子は、「特に心配していない。なんとかなる」と言っていましたが、私は半信半疑な気持ちもありました。行くからには、成功体験にして欲しかったのですが、ここ数年は積極的に人と関わる方ではなかったため、ホームステイの生活をどれだけイメージ出来ているのかわからず、心配になりました。過保護・過干渉とならぬよう、最低限伝えてアクションを待ってみたり、時には背中を押してみたりしながら出発の日を迎えました。
カナダに到着した第一報は息子からのLINE、カナダの到着ゲートの写真でした。日本では、朝の3時半くらいでしたが、一瞬で目が覚めました。その後も留学カウンセラーさんから写真が届き、あっという間にカナダになじみ、屈託のない笑顔を見せる息子の様子に涙が溢れてしまいました。
息子は、自分なりの決心があったのでしょう。周りの方に支えられながらも、有言実行、全行程をこなし、当然と言った顔をして帰ってきました。
今回振り返りながらふと思い出したのですが、外に出るのも嫌がっていた時期に、「何かあっても大丈夫。K家の星が付いてるよ!」なんて自分の思いを込めて言っていたことがありました。そんなメッセージを、息子はちゃんと受け止め、自分のスイッチを入れるべきチャンスを待っていたのかもしれません。
留学から帰ってきてからは、主体的に動くことが増えました。まだまだ思春期で波はありますが、行く前にはなかった底力を感じます。願いは叶う。自分のやってきたことは無駄ではなかった。ちゃんとサポートしてくれる人がいる。そう思えた経験がこれからの彼の力になっていくと思います。正に、人生のターニングポイントの機会を与えていただきました。本当にありがとうございました。』